2008年7月14日月曜日

農薬取締法と農薬適用表

分かりにくい農薬のラベル表示
農薬取締法に基づき、農薬として販売される物には必ず、適用表が表示され、「適用作物」「使用時期」「使用量」「使用上の注意」等が示されています。また、この表示には「適用のある物は全て表示する」という制約があります。 輸送上の効率化や、農薬の機能の向上により、農薬は少量化が進んでいますが、結果として製品ラベルの表示領域が小さくなっており、また、PL法への対応等により注意事項も増えているために、実際のラベルは使用者が十分に読んで理解するような状態になっていない様に思います(実際、昔ラベルの記載内容のチェックをしたことがありますが、眼鏡をかけて、思いっきり明るくしないと読めませんでしたー高齢化が言われている農業者対象の物としては些か問題があるように思います。)
農薬取締法の目的から; 
 「農産物の消費者への安全』 ーーーーーーー> 「適用作物」「使用方法」「使用時期」と「使用量」
 「生産者(農家)への効能の担保」 ーーーーー> 「対象病害虫雑草」「使用方法」「使用時期」「使用濃度」
 「生産者(農家)への問題(薬害等)の回避」 ー> 「対象作物」「使用方法」「使用時期」「使用濃度」
と同じ「使用時期」一つを取ってみても、その目的とするものが複数あり、それを同時に満たしている必要がある事がわかります。

現在登録のある4311農薬の実際に使われている表現の種類数について調べてみると;
適用作物   :1,169
使用方法   :1,087
使用時期   :2,375
使用濃度   :1,437
適用病害虫雑草:1,413

ありました(句読点の違いなども含めて、異なるものの種類を集計)。

ここで「適用作物」を見てみますと、2008年7月時点で1169通りの表現があります。 また、最近、マシン油の薬害で問題になった「果樹類」や「樹木」といった大雑把な表現や、「なばな類(ただしなばなを除く)」と言った理解し難い表現があります。 この適用表を理解する為には元になる、作物残留基準の為の作物の分類表を理解している必要があります。 現在、新しい作物残留基準に合わせて、「適用作物」の表現が変更されつつあるようですが、残留基準ベースで、全ての適用可能な作物を適用表に入れることは、適用表が煩雑になり難しいと思われますが、使用者が理解できる何らかの中間的な分類が必要なのかもしれません。
また、消費安全技術センターから提示されている「登録に使用すべき作物名」では、実際に登録のある非食用の作物でも見つからない物が多く、あくまでも、農作物の消費者への安全をベースに作られたものだと理解されます。 この点、この表も現実の農薬登録に合わせて、拡張するなり整理するなりする必要があるように思います。
また、「果樹類」「樹木」「花木」「花卉」等大括りの適用作物表現の場合、ここでの使用の可否の判断は、あくまでも作物残留基準からの判断であり、薬害などの問題については言及していないと理解しておく必要があります(薬害は、適用作物だけでなく「使用時期」や「使用濃度」によっても変わります)。 これを間違うと、長野のマシン油でくるみの木を枯らしてしまうようなことになります。

 目的の違う事項が混在している事が、それぞれの項目の表現の種類を必要以上に多くしていることは理解できますが、この際、当事者である国と農薬メーカは「使用者(農家)が使いやすいー理解できるラベル」を実現するために、大幅な整理・改善をすることが必要なのではないでしょうか? 分かりにくいラベルも農薬を敵対視する世論を醸成する要素の一つだと思われます。 使用者の利便性の為ではなく、行政や農薬メーカの責任逃れの為のラベルだと言われてもやむを得ない状態だと思います。

 また、農薬の適用表ばかりでなく、適切な使用方法などを説明する補助的な手段として、もっとWEBを積極的に利用してメーカが死蔵している多くのデータを積極的に発信する必要があると考えます。 農薬メーカ各社がホームページで自社製品の適用表などを掲示している事は承知していますが、農家の「今、キャベツに虫が付いているんだけど、来週には出荷したいが、どんな農薬が使えるのか?」といった最もありそうな質問に答えられるようなものは、少なくとも無償では存在しないように思います。 出来れば、メーカ横断的に使える農薬と使用方法等が一覧表示され、個別の農薬をクリックするとそのメーカが提案するその作物へのその商品の上手な使い方や使用上の注意などが表示されたりすると、とっても役に立つのではないかと想像します。

 そんな、私の考える「役に立つWEB」を 「農薬・農業情報サポート」 に作って見ました(尤も、「上手な使い方」は私が書くわけには行きませんので、リンクが張れるようにして、口を開けて待っている状態で、夢半ばではありますが)。

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