2008年7月1日火曜日

農薬取締法

世間で殆ど全てが悪の様に言われている「農薬」。 
これを規制している法律が農薬取締法です。 そこで、ちょっと調べてみると、
昭和23年7月1日に施行されており、
第1条の目的に
この法律は、農薬について登録の制度を設け、販売及び使用の規制等を行うことにより、農薬の品質の適正化とその安全かつ適正な使用の確保を図り、もつて農業生産の安定と国民の健康の保護に資するとともに、国民の生活環境の保全に寄与することを目的とする」 とあります。 
昭和23年の状況を考えると、実に広範な目的を包含した素晴らしい文章ではありますが、要するに、戦後の食料、資材不足のなか、「農薬」と称した紛い物商売が横行し農業生産に支障をきたしていたのを取り締まる為、農薬の生産と流通を規制するために作られた法律なのです。 (当時は「農薬」はプレミアム・ブランドだった!!)

その後、有機燐系の急性毒性の強い農薬の登場とか、レイチェルカーソンのサイレントスプリングによる有機塩素系の農薬の環境への影響、サリドマイド(医薬)による胎児への影響の確認による催奇形性試験等の長期毒性試験や発がん性試験の充実、また最近では食の安全への関心の高まりによる、作物群の細分化、環境面の規制の強化等、時代の要求に合わせて改正、拡充が図られています。

しかし、当初の目的が紛い物の規制であった法律ですので、その幹に色々貼り付けてみても、自ずと限界があるように思えます。 例えば、第2条(農薬の登録)は平成14年に全面改正されていますが、農薬の薬効・薬害の試験成績提出が残っています。
当初は、農薬としての効能を証明するため必須だったのでしょうが、今となっては製造物責任法とか、公正取引に関する法律と重複しているように思えます。 
 特に、この効果・薬害の試験に関しては、「公的機関」で確認される必要があるために、多くの時間と費用が掛かります。 特に、微妙なのは、作物と虫の組み合わせなので、キャベツのアブラムシの試験はキャベツのアブラムシにしかならない、ということです。 アブラムシにも色々ありますが、キャベツにつくアブラムシに効けば、白菜やレタスのアブラムシにも効くことは(一部例外があったとしても)容易に想像が付くと思いますが,法律ですので、それぞれに試験がなされ、効果が確認される事が必要です。
公的試験を管轄している所は、所管官庁との繋がりが強い所ですから、世に言う「天下り先」なのかもしれませんが、結果として、実に下らない試験を時間と経費と人をかけて毎年行う事になります。 試験を実際にやっている人にとっても、とってもつまらない試験のはずです。  

 農業のコスト低減で農薬の価格が常に取り上げられていますが、生産コストに占める割合は高々7%で、これがすべてタダになっても、コスト低減に繋がるとは思えませんが、本当に低減をしたいのなら、この様な法律について見直すべきではないだろうか、と思います。  効能として商品に謳った物が、効かなければ、不当表示でしょうし、農薬が効かなければ収量被害が出ますので、製造物責任にも問われる可能性があります。 従って,生物効果・薬害はメーカが自己責任で保証すべき事項ではないかと考えます。 公的試験については、結果責任を問われる事はありませんので、その意味でも、販売者が責任を持つ体制は、試験その物の品質向上にも繋がる、と考えられます。 (農薬が、必要な物として認められていた時代、公的試験を行う人達も非常にモラルが高く、意欲的で刺激された物です。 しかし、今の時代、「出来ればやりたくないけど、自分の研究の試験費の足しになるからしょうがないやる」意識の人達が多く、試験の品質は必ずしも高くないのが現実なので、公的試験がほんとに正しい考え方なのかは甚だ疑問なのです)

 国は、国民の安全に関わる、残留基準やそれを満たす為の収穫前処理日数の所をしっかりと試験・検査し、効果・薬害は当該メーカの試験データとその確認の為の一部の公的試験、といった役割分担をして効率化を図った方が、全てにとって良いのではないか、と思っているのですが、中々そのようにならないのは、公務員の再就職先の問題があるから? それとも法律の縄張り争いの問題?  

  農水省には、今後10ー20年の世界の食料事情、物価を勘案した、日本としての食料政策、農業生産政策(ひょっとしたら、再生産可能なエネルギーの生産供給計画も)などもっと重要な仕事に専念して欲しいのですが,、、。 少なくとも、これ以上「猫の目行政」と言われ無いようになってほしい!!

0 件のコメント: