2007年10月16日火曜日

NHK のライスショック

日曜、月曜と放送されましたが、私には「漠然と米作が危機に立たされている事」は分かっても、その具体的な内容については理解できませんでした。  なぜ農業問題の放送って、情緒的な話に終始するのでしょう?
 以下、問題点;
  1)米の価格が「玄米」の価格と精米の販売価格が区別されずに述べられている。
    米の流通価格について、夫々のステップ毎に価格がどうなっているのか、示す必要があるのでは?

  2)「これではやっていけない」との声を、そのまま流しているが、その経費の内訳が示されていないので、「そんなものかな」以上になっていない。
    何にどの位の経費を使っているのか?細かく示して、それに対しての収入がどの位になるのか出してみれば、私のラフな試算では50Haの水田を3-4人で経営するところが損益分岐点になってしまいます。 そして、農業機械の減価償却、租税等が大きな負担になっていることがわかります。  また、農薬、肥料など変動費も流通コストを見直すことにより20%位の価格低減を図ることができるはずです。

全体に、「大変だ、大変だ。 あなたはどう対応する」といった危機感を煽るような内容ではありましたが、問題の本質をえぐり出すような内容ではなかった、と思います。
  農家の生産規模とか、農家の努力ばかりを求める内容になりがちですが、産地偽装をはじめ、農産物に関わる流通(生産資材を含めて)は必ずしも合理化されているとは言えず、農業問題を議論する時には流通についてももっと詳細にメスが入れられるべきです。 特に、農協離れをしている専業農家が増えている事からわかるように、助成金漬けの農業で培われてきた農協流通が全体のコストを上昇させている事実ははっきり示されるべきです。(農業をやらずに農家の子弟が農協に努めて、給与をもらっているケースが多いので、コストの高い農協の営業は子弟へのお小遣い的な意味合いがあるのかもしれませんが、このような事を認めていたら、農業が死んでしまいます。)

もう何点か考えてほしかったのは;

1)為替レートや経済成長により農産物の輸入は変動する。
  (現状が維持される保証が、想像しているよりは遙かに小さい、という事実)
  今の勢いで経済成長すれば、中国は10年で、日本に輸出する必要はなくなる? (日本海を渡れば、新潟の方が近いが、北京・上海に同様の値段で売れるのであれば、ブランド確立のために一時的に日本に輸出しても、その後は国内向けが主となる可能性の方が高い)

  米国も、為替レートが150円以上に下がれば、別の作物に転換する可能性がある(ストックトン、サクラメント辺りは、比較的湿地帯なので米の生産に適しているが、ロッキー山脈からの水を利用しているので、同じ水を利用している都市部との水の競合から、水を多く必要とする水田は必ずしも歓迎されている存在ではなく、利益性から、果樹などへの転換があり得るし、バイオエタノール等の為の小麦・キャノーラへの転換も考えられる。)

2)農業廃棄物の利用など、新しい局面への展開
  米単作農家が生計を立てるのには、かなりの大規模化が必要です。 裏作作物が本当にないのか、米以外も作ることにより、収入の安定化を図る方法はないのか、本来の営農指導がもっと積極的に行われるべきです。(営農指導と呼ばれているのは、ほとんどが生産技術指導に終始している現実は認識すべきです)。
  特に、農業廃棄物(稲藁)からのバイオエタノールの抽出などの技術は、もっと積極的な投資で早急に開発すべきです。 結果としての環境対策、地域の産業振興と、農家・農業の保護が図れるからです(バイオエタノールを生産するために拠点に稲藁を運ぶのは愚かな考えです。小さなエタノールプラントが多数必要ですし、出来ればガソリンとの混合もその地域で賄われるべきで、その意味での産業振興)。 なぜ、農水はここに注力しない? 農水では出来ないので、政府の省庁横断特別タスクフォースか?
  コメのたんぱく質でアレルギーを起こす人もいますが、一方、「抗がん物質が含まれている」ということも言われています。 農産物をそのまま食すことばかりではなく、このようなファインケミカルの原料としての開発も積極的に行われるべきでは? (これは農水?)

3)ブランド戦略の誤り
   「世界中でコシヒカリが作られている!」 いったい誰が許可したの? コシヒカリは誰のもの?(国の所有するブランド、品種)  国家戦略として、まったく誤ってはいませんか? 日本の商社が外へ持ち出したとしても、それに対して高いロイヤリティを課していれば、こんな問題にはならなかった。 そう、国内では自由に使えるが、国外での生産については高いロイヤルティを要求することは、血税を使って育種された品種である以上、正当な行為であるし、WTOにも抵触することはないと思いますが、、、。

4)そもそも生産性が低すぎる
   育種が、本来の目的の安定生産、多収量から逸脱して、高付加価値、収量はどうでもいい、になって30年以上、一反当たりの収量は「日本晴れ」の10俵から「コシヒカリ」の6-7俵に下がっています。 これだけでも生産性は30-40%低下しているのですから、経済原則に則ればやってられなくなるのは当たり前です。 一体、農政は何をやってきたのか?

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