2008年8月26日火曜日

中国に食料を依存することの問題

といっても残留農薬とかの問題ではありません。 純粋な需給と生産を考えた場合に、将来の日本の食料価格に致命的な影響を与える可能性について考えてみます。
 1)何故中国の農業生産に依存するのか?
   労働コストが安いので、国内で生産するよりはるかに安いコストで生産でき、輸送費を含めても利ざやが大きい。
   気候風土から、日本で必要とする農作物はほとんど生産できる。
   ーー>流通業者にとっては、利ざやの最も大きい調達場所である。

 2)この状態(価格の優位性)は将来にわたっても維持できるのか?
   GDPの成長率からGrossで見れば、価格優位性は数十年で消失する。(但し、所得格差が大きいので、更に内陸部に行けば、労働賃金からは、維持できるが輸送や管理コストが増大する)。
   中国の農業生産は、人口の多さから機械化されておらず、個々には小規模(雇用の問題と、設備投資コストの問題)だが、これを集約する企業や個人が居て、外観上は大規模経営に見える(生産性は低い)。
   日本の高度成長期と同様、基盤整備、農道の整備ー>工業用地化が条件の良い所から進んでおり、効率の良い農地面積は縮小している(生産量の減少)。 都市並みの収入を求める農民が居る以上、この流れを止めることは出来ず、この先も、優良農地は減少して行く。
   黄河に水源を依存する河南、河北などの地域は、工業化による水質汚染と水の生活水・工業用水との需要競合から、十二分な水源を確保できる状態にはない。
   中国の生活レベルの向上に伴い、野菜類の国内需要が増え、価格も上がって行けば、輸出するメリットは相殺されてしまい、リスクをとってまで輸出するメリットはなくなる。
   ーー>中国国内需要の高まり、耕地面積の減少、日本との価格差の縮小から、輸出のメリットが減少し、輸出意欲もなくなってくる

 3)では、どうする?
   1)調達場所を、更に価格差の維持できる場所に変更して行く
     商社は、この様な発想で仕事をしているのでしょうが、考えられる代替地は緯度の低い所しかなく、完全な代替は出来ないし、このような方法を永遠に繰り返して行くことは出来ないのでは?
     南米などを考えることもできるが、生産の管理と輸送には、今まで以上にコストがかかる。
   2)中国に、契約栽培場所を確保する
     労働賃金で優位性を出さないと、契約栽培の維持が出来ないので、結果として価格の優位性は失われる。
   3)国内生産を効率の高いものにして、国産化を図る
     これが、一番まっとうな考え方ですね。
     しかし、規模の拡大、資金の供給、生産物の流通の改革等、解決すべき問題は非常に多く、また過去の柵に引きずられない大胆な改革が必要だと思われます。 まず、農業が農家単位の家業でなければいけない、といった先入観は取り除かれる必要があると思います。

 4)それ以外にも問題はある!
   世界人口が60億から80億になり、生活レベルが上がり肉食が増え、飼料や食物の需要が増え、それに伴い農地の拡大が起これば(塩害などの問題は置いておいたとしても)、生産資材、特に肥料の需要が急増することになります。 肥料の三要素(N、P、K)の内リンは燐鉱石に依存していますが、世界的に見てこの供給場所は限られており、調達価格の上昇は必至だと考えられます。
   持続可能な農業生産を考える場合、食料廃棄物、畜産廃棄物、農業廃棄物等から、肥料の成分を回収し再利用する技術を早急に確率する必要があります。 (洗剤や脂質にも燐が含まれていますので、これらも下水から回収して再利用することを考えるべきでしょう。 洗剤や畜産廃棄物による琵琶湖の富養化が問題になっていましたが、これこそ再利用可能な資源を捨ててしまった結果と考えるべきでしょう)
   農産物は国内で需給を賄うことで、為替や経済状況による価格への影響を抑えることが出きるように思われますが、生産資材や燃料も海外依存度が高いので、こちらも対策することが必要となります。 特に、今まで廃棄されていたようなものを再利用することにより、持続可能な生産を確立する技術は、国内だけでなく世界中で利用できる地球にやさしい技術ですので、この分野でのリーダーシップは日本の将来にとっても重要な物と思います。
   

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