2008年8月7日木曜日

ブレンダーという職業

お茶やコメでは「ブレンダー」という職業があったはずですが、この人たちは今はどうなってしまったのでしょう?
専門の職業人が、実際の味覚などを確認しながら、色々な産地の物を混ぜ合わせながら「最も美味しくて、最も廉価に提供できる(あるいは利幅の最も大きい物)を作り出す」のがブレンダーの役割です。 結果として、消費者は自分の味覚とか知識に頼る(専門でない個人には限界がある)事無く、適切な価格で、美味しいものを食することができていたはずです。
これが、一面的に「産地表示、XX%以上含まれていないとXX産と表示してはいけない」といった規制の元に、全て消費者の自己責任に任されてしまったように思います。  専門家の目からみれば「これは、XX産と言っても絶対に消費者には分からない」という物は過去の蓄積から十分に承知されていたはずですので、結果として「産地偽装」等は起こって当然なのではないでしょうか?
一時、魚沼産コシヒカリが大量に出回っていた頃には、よく「魚沼って田んぼは4階建てになっているの?」等と冗談をいっていました。 そもそも、安全性が担保されているのなら、何故DNA分析をしなければ分からないような所で、消費者が商品を選択する必要があるのでしょうか?  安くて、安全で、美味しい事が必要充分条件であって、「我が家では、魚沼産のコシヒカリしか食べていません」にどれだけの意味があるのか? そもそも、精米の仕方とか、ご飯の炊き方で味は全く違ってしまうのですから、コメに関して産地を表示してもあまり意味が無いように思います。 (試しに、消費者を集めて、産地当てのブラインドテストをしてみれば分かります。 90%は当らないはずです。 例えば少しモチ米を混ぜたりすれば、本当にわからなくなります)
カバンや装飾品ではない(これだって偽者掴まされる人は多い)のですから、食料品をブランドで売る習慣をやめるべきです。 結果として、本当に価値の高い農産物はもっと高く売れるはずです(価格に敏感な消費者には専門家がブレンドして、相応の価格で、その味を楽しめる商品を作れるのですから)。
自分で判断できないような物に価値を置く消費者の態度が「産地偽装」の温床の一つの原因になっているし、それを助長するような法律を作ったお役所にも責任があると思います。
ブレンダーの方々が、表に出てきて「XXXXのコシヒカリ(原材料:aaaa,bbbb,cccc)」といった商品を出すようにすれば、ブレンダーXXXXさんを信用した、味にうるさいけど価格にもうるさい消費者を掴めるのではないでしょうか? それも、価格競争のツケを生産者に回すことなく。  原産地表示(ほとんど100%でなければ受け入れられない)を義務化することにより、流通の価格競争の皺寄せがダイレクトに生産者に掛かってくることは、食物の生産(時間が掛かる)を考えれば、あまりにも過酷な状態だと思いますし、原価を割った出荷を強いられて農業がどこまで生き残れるのかも疑問で、自分の足を食っている蛸のような状態になっているのでは無いだろうかと心配します。

嘘をつくことが社会的に、もっと恥ずべき犯罪であることを明確に裁判で示すことと、適切な表示の基、もっとブレンドすることの価値を高めることが、農業再生の一つの方策になるのかもしれません。 お役所は責任逃れの刹那的な法律を作るのではなく、大所高所に立って、本当に必要な法律を作ってほしいものです。

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