2012年10月29日月曜日

農業へのIT導入(付録)

先に書いた文章は農業分野で使用するITシステムとして必要な要件でしたが、それを実現する為に最も重要なのはインターネットワーク上で種々の情報を相互交換できるインターフェースを作成、公開することではないでしょうか?
気象庁のアメダス情報は有償で利用出来る様ですが、何故有償?国民の税金で動いているのでしょ? 東京及び地方の公設市場の情報には標準化された情報効果の為のプロトコルが規定されている様には思えません。 また、各県が公開している病害虫発生予察情報等も県によって仕様がバラバラで一つのソフトで取り込んで利用出来る様にはなっていないように思います。 また、航空写真等イメージ情報と地図情報を統一的に取扱う方法なども標準化されていると、多くの業態からの参入が可能になると思われます。
一部の大手のソフト会社が農業用システムとして販売しているソフトが存在することは知っていますが、そのソフトの中で閉じられた世界を実現しているに留まり、オープンなネットワーク上のソフトとは呼べるような物で無いのは、このような国家などが主導してやるべきインフラの整備が極めて遅れているためだと思います。

農水省はこのようなインフラの構築の為の音頭を積極的にとり多くの企業の参入を促し、技術の向上とユーザの利便性、それに低廉化を積極的に推し進めてゆくべきだと考えます。 それこそが、官の役割ではないでしょうか?

農業へのIT導入

農家の個別補償制度とか、世界的な食料問題などとは何か逆行しているような政策がまかり通っているので、すこし真面目に考えてみたい。
 世界的な食料不足は今後も続く ー>
 各国は最大限の国内生産を行い、少なくとも途上国に食料を全面的に依存するような政策を止める必要がある(人道的な意味も含めて) ー>
 国際競争力を持つような農業生産技術及び生産基盤の整備が必要 ー>
 効率の良い生産をするために、(生産規模の拡大やバイオテクノロジーのみではなく)自然科学の知識と、細かいデータの収集管理が必要 ー>
 この分野でのIT技術の応用(更なる自然科学技術の発展)、それに市場価格等の情報の共有により、農業が最先端の技術産業となる ー>
 人と資本の新規参入が期待される ー>
 国際的に貢献できる生産技術の確立と輸出が可能となり、日本の技術優位を確立できるばかりでなく、互いに農業生産物を補完出きるような国際関係を構築できる ー>
 農業生産の維持と、安定した繁栄が享受できる。

では、農業に関わりITが貢献できるものとは何があるだろう?
 生産計画
  自分の所有する圃場からの収益を最大化する為に、市況情報、天候の長期予測等の情報を総合的に判断した生産計画を圃場毎に計画する必要がある。
  このとき、過去の履歴からその圃場の特徴を押さえて計画を作る必要がある。 
  有機や無農薬を謳うのであれば、対応する過去の生産履歴を近隣圃場の分も含め、管理しておく必要がある。
  全ての圃場の生産計画から、労働の平準化をし、外部の労働力への依存度を調整する。 
  生産資材の調達時期、生産設備のレンタル、リース等の最適化を図り、キャッシュフローの最大化を図る。
 生産管理
  播種、植え付けの時期からの気象データから、詳細な生育情報を取得し、作物の生育状況に応じた生産管理(水管理、施肥、耕起、農薬散布など)を行う。
  肥料、農薬は細かく管理し、最適な時期に最適なものを最適な量使用するようにして、過剰な使用をしない様にし、コストを低減させると共に安全性の向上を図る。
  収穫時期も、気象データ(積算温度、積算の日照量?)から予測し、市況予測との調整から収入の最大化を図るよう収穫日を決める。
 在庫・資産管理
  生産資材、生産設備、農地等、其々が価値に見合って収益に貢献しているか常に検証し、効率の悪い資産はレンタル・リースなどに切り替える。
  生産資材(肥料、農薬)は在庫の最適化と、購入価格の最小化を図るよう、購入時期、価格情報等を管理する。 
  また、販売価格情報の収集を行い、不必要に多くの資金を投入しない。
 財務管理・税申告
  圃場毎の、投入資源と収入から、圃場毎に利益計算をして、圃場言に年間のROIを出し、翌年の生産計画の資料とする。
  資金の借入れ、外部労働力の雇用等の最適化が行えるような財務管理が必要。
  確定申告の書類が作成され、確認の上、電子申告出来る。
 市況情報(生産物、生産資材)
  市場の価格情報が過去3年程度は月と日にち毎に可視化出来るように管理する必要がある(東京市場、地方都市市場、ローカル市場)
  生産資材の販売価格は、近隣のホームセンター、農協等の情報が可視化できていること。 配送のコスト、最小配送単位、注文から配送までの期間等が必要
 気象情報
  アメダス情報+補完できる気象情報(あれば)
 地理情報
  個別の圃場の位置を特定、図示化できるレベルのGPS情報と、可視化の為の地図情報が必要
  有機栽培等の為に、近接圃場との距離(5メートル以上)が示せることが必要な場合がある。
 航空写真(衛星写真)情報
  生育状況、病害虫発生状況等を、自分の圃場だけでなく、より俯瞰的に把握することにより、防除時期の決定や出荷時期の調整などが可能となる。
  米国などでは、衛星写真で窒素肥料の施肥管理をGPS付きトラクターで行う、等、衛星利用がされている(北海道の米で一部行われているー伊藤忠)。

農業は一般に経験と勘に頼る年寄りの職業と思われがちだか、実際のところは科学的に判断するに足るデータが十分に揃わないために、データの不足を補うために長年の経験や勘が使われてしまっている。 もっとも簡単な例として、作物の年齢(日令)を示す一般的な方法はありません。 兵庫農業試験場では米の品種により、植え付け時期からの積算温度で生育ステージを推定し、収穫時期の予測をしているシステムがありますが、この方法が最適か否かは定かではありません。 また、野菜などでは、この様な数値化できるような生育ステージの指標が存在するという事を聞いたことはありません。 例えば、植え付け時からの積算温度と生育ステージの相関が普通の野菜でも認められれば、栽培管理は飛躍的に効率化できると思います。 また、施肥管理や農薬の処理などを平準化した生育ステージ(日令)で示すことが出来れば、集合知としてこの様なデータの再利用が可能となり、栽培技術の向上に資することも出きるようになります。