2008年1月31日木曜日

行政府は米の生産についてのまともな長期ビジョンを示すべきでは

誰(行政も、生産者も)も現実として分かっているのに、触ろうとしない。 
まるで、戦時中の「一億総玉砕」の状況に近いのがコメの生産農家の実態ではないでしょうか? このような方向性がよく見えない状況で進めば、本当にコメ農家がいなくなってしまうのではないでしょうか?
敢えて、大胆な予測と提言を試みる
前提)
1)人口からみるコメ需要
 127百万人X60kg年 = 7,620,000 トン
5トン/haの収量があるとすれば、必要な面積は
7,620,000/5 = 1,524,000 Ha
  
要するに、WTOの輸入枠を除いても今の1660千Haから更に150千Ha減らさない限り過剰生産となっている。
また、人口は今後減ることはあっても、当面増えることはない。 老齢化から、消費量も減ってくるので、更に需要は減ってゆく。
  従って、食用としての米だけを追求してゆけば、先行きは極めて暗い。
2)価格の下落
  過剰生産から、コメの価格は低下の一途を辿っているが、農家の対応は「高付加価値、高価格品へのシフト」での対応なので、結果として「高付加価値、高価格品」の価格が下落している。 また、退職者の余暇の生産農家と、生活の糧を得るための専業農家が同一市場で競争するような状況で、専業農家にとって、より不利な状況を作っている。 (有機、無農薬等の小規模生産による付加価値は必ずしも生産者に還元されておらず、中間流通の搾取の対象となっている。 -コメは元来ブレンドすることが基本の流通構造をしており、偽装が行われやすい流通機構になっている。 また、手間の分が、必ずしも価格に反映されていない)
  どこまで価格が下がるのか、誰も着地点を示していないことが、問題を大きくしている。

3)高付加価値品への移行の危険
  工業産品でも、「イノベーションのジレンマ」(クレイトン・クリステンセン)で示されているように、最終的に崖っぷちに追い詰められてゆくような戦略であり、長期的にとれる戦略ではない。 (高付加価値が消費者のニーズを超えた所で、価格に転嫁が出来なくなることと、低価格品の品質が上がる事により、市場から追い出される)
  農業産品として、最も危険なのは、「土地は固定資産」であり、ここからの収益を最大化しなければ農業は成り立たない。 従って、生産調整や、価格に転嫁できない高付加価値化による収量の低下は直接的に農業の経営そのものに影響を及ぼす。 また、育種、栽培など時間が必要な研究開発が、高付加価値にシフトされているとすれば、本来の「生産性を上げる」方向への舵の取り直しには、想像以上の時間を必要とすることになり、簡単には対応が出来ない。

提言)
 1)コメの価格の予測
    60kg 6000円程度を下限(向こう10年)と設定して、この価格で年収1000万円程度が確保できるコメ農家を創出する。 (現在の農水省などの言う規模拡大は具体的な目標ビジョンが示されていない!)
    根拠: 米国のコメ価格との比較、中国への輸出量の拡大(中国のGDPの増加)を考えれば、中国の生産価格を対象とする必要はなく、また、他用途への転用の容易さなどを考えれば、この程度の価格帯が一つのレベルだと、現時点の為替レート等からは予想される。

 2)収量の拡大
    食用を専らとする政策から、コメの収量の減少は行政的に好ましいものと見られてきたが、農家経営からは、やはり、Ha当たり8トン~10トンの収量が得られ且つ消費者の食味を満たす品種を育種する必要がある。

 3)消費の拡大
    食用としての拡大
     もっと簡単に、朝でも簡単に準備できる調理法
     発芽米粉の小麦粉のような用途等、新しい用途の開発
     品質が保証された米としての輸出
    飼料としての利用
    バイオエタノールの原料としての利用
 
これらの数値から試算される総収量と農業経営の損益
  国土保全の観点から栽培面積を2百万Haとし、収量を8トン・Haとする。
  総収量:16,000,000トン
  用途別: 7,200,000トン =国内食用
200,000トン =輸出用
3,000,000トン =家畜飼料
5,600,000トン =バイオエタノール(33%の収率として、1,848,000Kl)

結論として、この程度の価格でも100Ha規模を6人で経営すれば、1000万円の粗収入が得られる経営が可能なのです。 従って、生産物の消費が安定して確保できるような、政策が確立されることが必要であり、特にバイオエタノールの利用促進が、コメの生産を安定化させるためにも必要になるものと考えられます。 稲藁によるバイオエタノールの生産と併せて、石油価格を150円程度とすれば、80~100円程度の助成が必要で、千五百億から千八百億円の助成措置が必要となります。
(助成措置も含めて、現状のような、経済産業省と環境省がバラバラに推進して、停滞している状況で、夏のサミットでどんな顔して環境重視の姿勢を示すのでしょう? 首相はいまだに石油会社と関係あるのかな?)

メタミドホスの中毒事件

とうとう発生してしまいました。
しかし、どの報道も「農薬として使用されたメタミドホスの残留」が原因のように言っていますが、聞いたところの報道からすれば、ちょっとおかしい。 餃子の大きさ、その中に入っている具の量などを考えると、どう考えても、作物に残留するメタミドホスに由来する事故、というより「意図的、或いは非意図的」に混入した(された)かなり濃度の高いメタミドホスが原因と考える方が適当だと考えられます。

(高濃度の混入が考えられるケースとして;
1)具の中に、使用する前に高濃度の薬液にディッピングされていたものがあったー有機リンとしてこのような使用は普通行わない。 
2)餃子の皮の小麦粉の中にメタミドホスが混入していた。 小麦粉の原料の袋のそばに農薬が置かれていて、使ってしまった等々
等が考えられますが、概ね農業生産者に起因するものではなく、最終生産工場レベルでの問題)

農薬の専門家等という人が、報道番組に出て来てもこの点について、何ら指摘していないのは大変残念なことです。 本当の専門家が適切にこの点について早期に説明することが、原因の究明と公表と共に必要かと思います。 
放置すれば、また農薬に対する非科学的な批判が広がる事になってしまうのでは?と危惧します。